生物と都市のスケーリングと創造性

"Where Good Ideas Come From" by Steven Johnson は大変興味深い著作です。

 

スケーリング関係とは生物の体または器官のサイズとそれらのサイズに伴って変化する構造や機能との関係のこと。

 

動植物の呼吸は体重の四分の三乗に比例するというクライバーの法則があります。

つまり体重が大きい動物ほど呼吸数が少なくなるとのこと。

 

たとえばwoodchuck(北米のリス)と牛の体重は1:1000。 牛はwoodchuckより5.5倍長生きするが、心拍動の回数は5.5分の1だそうです。身体が大きくなるほど心拍動の回数は少なくなります。

興味深いのは一生の間の心拍動の回数の合計は生物すべて同じだそうです。

Geoffrey West氏は都市のスケーリング研究の結果を下の論文に発表しています。
“Growth, innovation, scaling and the pace of life in cities“ (2007)

以下はアブストラクトの最初の部分です。

 

Humanity has just crossed a major landmark in its history with the majority of people now living in cities. Cities have long been known to be society's predominant engine of innovation and wealth creation, yet they are also its main source of crime, pollution, and disease.

 

この研究結果によれば、都市も大きくなればなるほど"心拍数"は少なくなってきます。(犯罪、ポリューション、病気などの増加)

しかし、イノベーションについては、都市が大きくなっても増加を続けるとのことです。(特許、研究開発予算、クリエイティブな職業、発明者など)

 

Steven Johnson氏が説く七つの法則は


法則1:隣接可能性、法則2:液体ネットワーク、法則3:ゆっくりとした直感、
法則4:セレンディピティ、法則5:間違い、法則6:外適応、法則7:プラットフォーム。

全体の著者の主張は、コラボレーションを誘発する雑談、意見の交流の重要性を説き、アイデアに突然の閃きなどなく、「ゆっくりとした予感」による既存テクノロジー、既存プラットフォームをベースにした個別要素のネットワークであるとして、発想の転換を勧めます。実際のアイデアは、七つの法則の組み合わせによるとしています。

 

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