スウェーデン民主主義調査委員会の答申 (SOU 2016:5)

スウェーデン政府の2014年民主主義調査委員会の答申が今日政府に提出されました。 665-689ページに英文 summaryがあります。

 

前回の民主主義政策の調査委員会は2000年に答申を提出しました。

当時は、①市民運動の参加者の減少、②政党の党員数の減少、③投票率の下降、④特に若者の政治意識の下降、などの背景がありました。

 

スウェーデンの投票率(2014: 85,81%)は国際的に高く、そもそも民主主義政策の調査委員会が必要なのか、という議論もあったようです。

今回の答申のタイトルは〈より多くの市民に未来を形づくってもらおう!〉

 

民主主義政策の新たな目標を〈参加と平等な影響力による持続可能な民主主義〉とし、具体的には以下のような提言をしています。

 

⑴〈市民動議〉制度を導入する。
投票権がなくともすべての住民は個人で国会、県議会、市議会に動議がウェブで提出出来る、という制度です。

そして6か月以内に住民の1%の支持があれば議会は1年以内に議員の動議と同様の扱いをすることが義務付けられます。

 

⑵〈16歳の投票権の自治体選挙による試行〉

2018年と2022年の地方選挙で一部の自治体で投票権を16歳に引き下げを施行する。

その理由として以下が挙げられています。

①現行の投票権は18歳だが、スウェーデンでは4年に一度しか選挙がないので、実質的には初めて投票する時の年齢は20歳程度となっている。

②11月にEUはEU議会の選挙の投票権を16歳にするよう勧告した。
③ノルウェー、オーストリア、ドイツ等の経験では、地方選挙の投票権を16歳に引き下げることにより、若者の投票率が高まっている。
④スウェーデンの若者は民主主義についての知識が少ない。
⑤スウェーデンでは被選挙権も18歳、刑事責任の年齢は15歳である。
⑥研究者によれば16歳の成熟度は18歳とあまり変わりがない。

 

⑶ 〈自治体の政治家の活動を容易にする対策〉

スウェーデンの地方議員の約半数は政治活動を辞めることを考えた、とのこと。

議員の半数は暴力またはその恐怖を経験しているそうです。

議員が育児休暇を取りやすくする、障がい者の政治活動を容易にする、などが含まれています。

 

⑷ 〈権力の集中を防ぐ対策〉

政治権力の中央集権化、エリート化が進んでいます。このため、委員会の委員長を務められる任期を制限する。

 

⑸ 〈政党補助金制度の見直し〉

政党への補助金が多く本部に〈上納〉されている、との調査結果があります。地方の必要なところで使われるように見直しが提言されています。

 

 

関連資料: Dagens Nyheterの意見記事 (2016-01-18) Olle Wästberg 委員長等

答申セミナーのSVTの放送