「疑う中国人、信じる日本人」

「疑う中国人、信じる日本人」は日経ビジネスオンラインの福島香織さんの記事の見出しだ。

 

東日本大震災後日本に取材に来ていた中国からのジャーナリスト一行が、福島第一原発爆発のニュースを耳にして急いで中国に逃げ帰った記事である。福島さんは以下のように書かれている。

 

「日本は信任の国で中国は不信の国なのです」(静岡大学教授でモンゴル族作家の楊海英氏)

 

中国人は基本的に政府発表を信じず、時に隣人や家族ですら信じないこともある。反右派闘争や文化大革命のような歴史的動乱を経験した結果、人を信じることはできない、人は裏切る、というのが中国人の骨身に刻まれてきたことだろう。


一方で日本人は政府発表、公式発表をあまり疑わないのではないか。私自身も心のどこかに、政府発表や東京電力の会見に隠ぺいやうそがあるのではないかという思いもありながら、これら発表にうそがないと信じたい思いの方が強いのだ。

 

朝日新聞によれば、中国・瀋陽の地元紙「時代商報」が行ったアンケートによると、今後も日本製品を購入し続けるかとの問いに対し、「購入しない」が31%にのぼり、「購入する」の26%を上回った。購入しない理由として、「放射線の影響を恐れる」と答えた人が44%にのぼり最も多かった。アンケートはメールや面接などの方式で市民1千人に対して行い、893人が回答した。

 

 

大震災後連日、被災された方々、そして幸いにも被災しなかった日本人の様子が報じられている。そこから見られるのは、信じる日本人、助け合う日本人の姿だ。日本人にこれほど暖かい思いやり、親切心、利他性の心があったのか、と思うほどだ。

 

スウェーデンの人気作家でカロリンスカ医科大学教授のステファン・アインホーンさんは"Konsten att vara snäll" (親切であることの芸術)の中で下のように述べている。

  
親切さは、バカ、ナイーブさ、従属性などと結びつけられることも多い。しかし、私にとって親切な人は心に倫理を持って生きる人である。親切な人はバカとは正反対で、本当に賢いのである。なぜなら他の人にしてあげることは、自分たちのためにもしていることを理解しているからである。

 

館岡康雄氏は『利他性の経済学-支援が必然となる時代へ-』で、新しい時代のキーワードを、利他性を内包する「支援」とした。「してもらうこと」と「してあげること」を交換することによる世界が必然になるとの主張だ。

 

幸福度の国際調査で世界一のデンマーク人が幸せと感じる理由の一つは、国と家族隣人に対する信頼感だそうだ。

 

大震災で明らかになった「信じる日本人」を信じたいものです。